源氏物語の花 薄(すすき)
(宿木 第七章第六段 匂宮、中君の前で琵琶を弾く)
枯れ枯れなる前栽の中に、尾花の、
物より殊に、手をさし出で招くがをかしく見ゆるに、
まだ穂に出でさしたるも、 露を貫きとむる玉の緒、
はかなげにうち靡きたるなど、例の事なれど、
夕風、なほ、あはれなりかし。
「 穂に出でぬ物思ふらし篠すすき 招く袂の露しげくして」
「 秋果つる野辺のけしきも篠すすきほのめく風につけてこそ知れ」
枯れ枯れになった植え込みの中に、尾花が、
他の草より高く手を出して招いているのが美しく見えるので、
まだ穂が出かかったすすきが露を貫いて止める玉の緒が、
頼りなさげに靡いているのは、普通のことだけど、夕風がしみじみと感じる。
「密かな恋をしているようだね 薄のように招く袂が涙で濡れている」
「秋が終わることは 風に揺れる薄でわかります。
わたしに飽きてしまったことは あなたの素振りでわかります」
画像はWikipedia
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